
老人の横顔
清らかな紙面に、濃淡の入り交じるグラファイトの線が老いた横顔を静かに立ち上げ、掃くような髪と薄れていく髭が、余白のなかで歳月のささやきを響かせる。
グラファイトの素描。温かみのある淡いベージュの紙に、張りと緩みを交える線が形を起こしてゆく。こめかみから耳の後ろの暗部は密なクロスハッチで深め、鼻梁と眉弓は硬質な折れ線で定め、髭と顎は軽い擦りで余白へと溶かし、実から虚への移行をつくる。頭部は画面左に置かれ近景で切り取り、頂の髪は長い線でさっと払う。右側の広い余白が右下の署名と呼応し、画面を安定させる。全体の気配は静かでたくましく、側光のもと沈思の一瞬をとらえている。
- カテゴリー
- 人物・デッサン
- 制作年
- 1986
展示風景
