
老人の肖像
温かな紙色と冷やかな素描の灰が交差する中、老いた男は正面からこちらを見据え、精緻に捉えられた無精ひげと皺が、静かで屈しない気品を湛える。
正面の胸像で、背景は余白のまま。頭頂と肩の輪郭を簡潔な線で収め、光と陰の効果を顔へと集中させる。眉弓、頬骨、下顎は短いストロークとクロスハッチの層で塑造され、無精ひげや皮膚の皺が丹念に記され、調子の移ろいは節度をもって明晰。視線は落ち着き、唇はわずかに結ばれ、作品全体に質実で抑制のきいた気配と、歳月に培われた強靭さを帯びる。右下の手書きの記号が即興の気息を残し、作者の手の痕跡を生き生きと伝える。
- カテゴリー
- 人物・デッサン
- 制作年
- 1980
展示風景
