
秋嶺煙嵐
赭の染みる断崖と渦まく雲海のあいだ、ひとつの小亭と数本の老松が秋の稜線に佇み、煙嵐の呼吸を聴く。
まず墨で骨格を立て、赭と淡い青緑を重ね、湿筆で漂う霧気をひろげ、乾いた擦りと簡潔な勾線で嶙峋たる岩骨と稜線を刻む。右にそびえる大きな岸壁と左の鋸歯状の峰々が呼応し、中央は大きく余白を雲海とし、前景の小亭と数本の松が視線を留め、実と虚・近と遠の対照を成す。幹は枯筆でよじれ、松針は節度ある点で置かれ、線と面が絡み、冷暖の色がほのかに交わる。全体の気配は凜としてゆるやかで、初秋の朝霧のなか、山の呼吸が鑑賞者の鼓動と歩調を合わせて静まっていくかのようだ。
- カテゴリー
- 水墨画・山水
- 制作年
- 1999
制作の過程

1. 下描き

2. 墨入れ
展示風景
